​ヨガとは何か/ヨガがどのように役立つのか

(Sonia Sumar著 “Yoga for the Special Child” 第3章より抜粋・翻訳)

ヨガとは何か

ヨガとは、3,000年以上前のインドに起源を持つ身体的・精神的な修練に関する科学的な手法を指します。その目的は、私たち一人ひとりが自身の持つ潜在能力を最大限に発揮し、永続的な健康と幸福を手に入れることです。私たちは、ヨガを行うことによって、健康で生産的な人生を一般的に考えられているよりも長く過ごすことができるとともに、生活の質(QOL)を改善することができます。

 

私が成人や子どもにヨガを教える際に主な根拠としているヨガの部門は、ハタヨガと呼ばれるものです。ハタヨガでは、背骨の配置を整え、柔軟性を高め、筋肉および結合組織を強化することにより、構造的なレベルで体に働きかけることから始めます。同時に、内臓が調整され、活性化されるとともに、皮膚・消化器・循環器・肺の毒や老廃物が浄化されます。さらに、神経系・内分泌系のバランスがとれ、調整されるほか、脳細胞に栄養と刺激が与えられます。これらの結果として、知的な明晰さや感情の安定、全般的な幸福感の向上が期待されます。

 

ヨガは、様々なレベルでの活用が可能であることから、慢性疾患ならびに既存の治療法では効果が上がらなかった症状に対して有効なセラピーとなる可能性があります。こうした理由から、ヨガを練習しているダウン症やその他の発達上の課題を持つ子どもは、基本的な運動・コミュニケーション・認知スキルを早期に獲得することがあり、しばしば親や教師を驚かせます。同じヨガのルーティンが、学習障害(LD)の子どもの集中力・バランス・日常生活での落ち着きの向上にも役立ちます。すべての人が一定の効果を手にします。そのために必要なのは、正しいインストラクションと定期的な練習のみです。

ヨガがどのように役立つのか

脳性麻痺

ヨガのポーズ(アーサナ)の練習の後に深いリラクゼーションを行うことにより、脳性麻痺の子どものほとんどが持つ筋緊張の高さを緩和することができます。アーサナを保持することで筋肉や腱を心地よくストレッチし、筋肉組織ならびに関節周りの全般的なストレスや硬さを軽減します。アーサナは身体をリラックスさせると同時に、身体の中の筋緊張が低い部位を鍛えるのにちょうどよいだけの抵抗も与えます。このようにして、アーサナは、脳性麻痺の子どもの筋緊張の問題を実際に改善します。

 

脳性麻痺の子どもにとってのアーサナの練習の最も重要な側面は、おそらく背骨をストレッチさせその配置を整えることができる点です。アーサナでは、背骨をあらゆる方向に曲げたりねじったりします。科学的に設計された、体を伸ばす、またその反対方向に伸ばすという動きは、椎骨(背骨を構成する一つひとつの骨)と椎骨の間にスペースをつくり、椎間板や背骨から放射状に伸びる神経への負荷を減らすのに役立ちます。これらの神経への負荷が減ることにより、体全体の筋緊張が緩和され、全般的な神経機能が向上します。この結果、その子どもは、より幅広い動きや協調運動、より自立した生活を身につけることができます。

 

ダウン症

ヨガのポーズ(アーサナ)は、体全体をストレッチ・調整・強化するのに役立ちます。さらに、アーサナには、内臓へのよい効果や内分泌腺の平衡を保ち活性化させる効果も期待されます。そのため、ヨガを練習していないダウン症の子どもでは年齢が上がるとともに体重が増えることが多いのに対し、ヨガを練習している子どもはスリムで柔軟な身体を維持することができます。アーサナは、中枢神経系へのよい効果が期待されるヨガの呼吸法と一緒に行うことによって、発達上の課題を抱えるあらゆる子どもにとって重要なスキルである身体意識や集中、記憶力の向上を促します。

 

自閉症スペクトラム障害

自閉症の子どもにヨガを教える際の初めのステップは、その子どもとの強いつながりを築くことです。これを行うためには、ヨガの先生がその子どもが住む世界に入っていく必要があります。つまり、彼または彼女がいるところでその子どもに出会う必要があるということです。先生は、それができて初めて、その子どもからの完全な信頼を得ることができるのです。マッサージや音楽、ダンス、言葉遊び、お話なども、先生がその子どもとの関係性を築くために使えるテクニックです。

 

生徒と先生が次第に信頼と友情の関係を築くようになると、ヨガの先生は、自閉症を持つ子どもが殻を破って社会的交流の世界にやってくることを助ける、いくつかのヨガのポーズ(アーサナ)や呼吸法(プラーナーヤーマ)を教え始めることができるようになります。ヨガの先生は、生徒がこうした初歩的なポーズに慣れてきた後に、ヨガのルーティンにさらにいくつかのアーサナや深いリラクゼーションを段階的に加えることができるようになります。アーサナ、プラーナーヤーマと深いリラクゼーションをすべて行うことにより、子どもの神経系が強化され、全般的な健康状態の向上や、身体意識ならびに集中力の発達が促されます。ヨガ療法は、生理的・心理的な統合性の最適化により、自閉症の子どもが運動、コミュニケーションおよび社会的なスキルを獲得するのを助けます。その結果として、生活の質(QOL)の全般的な改善が期待されます。

 

注意欠陥障害(ADD)

ヨガの呼吸法(プラーナーヤーマ)を教えることは、呼吸が感情と深く結びついていることから、注意欠陥障害を持つ子どもへのセッションを始めるのに理想的な内容です。しかしながら、その子どもの信頼と注意を得るためには、ヨガの先生がまず初めにその子どもとの強い絆を築く方法を見つけることが大切です。そうすれば、練習がより早く前に進むでしょう。プラーナーヤーマは、感情へのポジティブな影響に加え、脳の重要な部位ならびに中枢神経系を刺激します。プラーナーヤーマとヨガのポーズ(アーサナ)、深いリラクゼーションを組み合わせることにより、その効果はさらに促進されます。注意欠陥障害を持つ子どもたちは、定期的なヨガの練習により、身体意識、感情の安定、集中力の向上を身につけるとともに、学業や創造的な遊びでの能力向上も期待されます。全般的な能力の改善は、自己肯定感の向上につながります。

 

注意欠陥多動性障害(ADHD)

現在、米国で400万人以上の子どもがADD/ADHDと診断されています。この行動障害には、テレビでの暴力的なシーン、栄養の偏り、出産前の両親の服薬、感覚への過負荷、環境汚染、過密、家族の枠組みの崩壊などの多くの要因が考えられます。ヨガでは、身体を使ったポーズ(アーサナ)や呼吸法(プラーナーヤーマ)、深いリラクゼーションなどのテクニックを用いて、中枢神経系の沈静化と強化を図ります。ヨガは、ADHDを持つ子どもやティーンエイジャーが、くつろいだ非競争的な方法で自身の身体とつながることを助けます。ヨガには精神的な側面もあり、ヨガの練習生を自身の内側の静寂と気づきの中にくつろがせます。これは、現在の混乱した生活ペースの中において、経験することが非常に難しくなってきているものです。

 

ADHDの子どもたちは、その多動性や気の散りやすさから、しばしば学習上の遅れを伴います。たいていの場合、ヨガの先生は、ヨガのすべてのルーティンを教えようとする前に、プラーナーヤーマと少しのアーサナを教えるのがやりやすいと感じるでしょう。これは、彼らが心を鎮め、インストラクションに従うのに十分に役立つでしょう。片鼻交互呼吸は、心を落ち着かせ、脳の右半球と左半球のバランスをとることができるため、ADHDの子どもたちに特に役立ちます。こうした子どもたちに正しい呼吸の方法を教えることは、彼らのヨガの練習の重要な側面です。ヨガの先生は、ADHDの子どもがインストラクションに従えるようになると、次第にさらに多くのアーサナや深いリラクゼーションなどを教えることができるようになります。

→ ソニア・スマー(シバカミ)インタビュー

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